東京高等裁判所 昭和56年(う)839号 判決
被告人 呉照代
〔抄 録〕
原判決挙示の関係証拠によれば、被告人が昭和五五年八月五日蒲田警察署において任意に提出した尿中から覚せい剤であるフエニルメチルアミノプロパンが検出されたこと、覚せい剤が体内に残留して尿中に排泄されるのは使用後最大限一〇日間位であること、当時被告人が東京都内から離れたことはなかったことなどの各事実が認められ、これらの事実に徴して、被告人が、昭和五五年七月二七日ころから同年八月五日までの間に、東京都内において、なんらかの方法によって覚せい剤を自己の体内に摂取して使用したものであることは明らかであって、所論が縷々主張する点を考慮してみても、右の認定を妨げるものではない。ところで、原審において取り調べた関係証拠を精査してみるに、原判決の判示するように、被告人が覚せい剤の水溶液を自己の身体に注射して使用したものと断定することは誤りであって、当審証人島崎克己の証言によれば、覚せい剤を身体に摂取して使用する方法としては、注射のほか、服用によることもあって、いずれの場合も体内の覚せい剤が尿中に排泄される期間には大差のないことが認められるので、原判決としては、被告人の本件覚せい剤使用の方法については、これを注射もしくは服用して使用した旨認定すべきものであったと考えられる。しかしながら、右の誤認は、判決に影響を及ぼすことが明らかなものであるとは認められない。<以下略>
(内藤 三好 石田)